さいごの、夏の記憶。

桐島ナオが講師をしているPhotoCafe写真教室で生徒達と一緒に開催する合同展が今年も12月にあるのですが。
その、「全員課題」で「トトロのイメージ」というものが8月に出ていて(桐島が出したんだけど)。それを、自分でも撮るということを少しだけ忘れていまして。ちょっと焦って。思いだしました。

トロロのイメージって、どうしても「田舎」で。
自分にとって、田舎というのは「ひぃおばーちゃんち」なのでした。
三浦半島の田舎の、山の中の、その奥のあたり。ひぃおばーちゃんちは、和風というか古風というか。
その辺り一帯が、映画の中の世界のような不思議な場所だった記憶があります。
でも、桐島が小学生の時にひぃおばーちゃんが亡くなってからというもの。一度も行った事はありませんでした。
だから、頭の中は記憶というか、想像に近くて。もう、相当変わってしまっていても可笑しくないような年月。

でも、やっぱり自分の田舎はそこしかないな。と、朝から電車で片道2時間半。
そんなに遠くないといったらそうかもしれないけど。意識的に、遠かった。
実家で荷物を置いてカメラを担いで。父上のギアつきチャリを借りて、そこから2時間。ふた山越えて行って来ました。
 

汗だくで、心臓が破裂するくらい運動して、とうてい会話が出来ないくらい肩で息をするなんて。
最近あんまり無かったなぁ、と。一気に山を登って、ペットボトルの水を飲む。
そこからまた、一気に谷を下って入る。

変わってない事にびっくりする。
自転車で風を切る僕は、小学生の時と同じ目線で山道のカーブを曲がる。
山の間の段々畑を抜けて、いつかの犬小屋を横目に見て。
ぐんぐん加速するスピードを押さえないで、昨日遊びに来たみたいに、当たり前に神社についた。
 

全然変わってなさすぎて自分だけが急に歳をとったようにさえ、感じる。
小学生の頃、近所の子供達に混じって遊んだような、喧嘩をしてたような。笑
神社の樹に登ったり、カブトムシを取ったり。
この神社と公園の縁日に来た時は本当に怖くてドキドキしたのを、急に思いだした。

そうだ。「おみこし」を引っ張ったのも初めてだったなぁ。
親戚のおじちゃんの良く判らない柄杓みたいな楽器がとても不思議だった。

道の写真を、撮る事を本当に忘れていて。笑
もっと感動したり懐かしいかと思ったら、当たり前の景色すぎて、すっと、自分の中に入って来てしまって。
カメラを構える事を忘れてしまった。
写真を撮るより、この「場」の中に入ってしまったようで。

それでも、ひぃおばーちゃんちの敷地に入った時はちょっと緊張した。
同じ名前の表札が並ぶ地区。
その、一番奥にある、ふるい、ふるい、大きな家。

あまりに、変わらなさすぎて、ちょっと衝撃だった。
そのまま、時間を止めて。誰かが持って来たみたいで。

門、というものはないから、道をそのまま進むと庭の中にある家の前に出る。
呆然としていたら人の気配がして。誰だか分からなかったけど、作業着のおばぁちゃんに「こんにちは」と挨拶したら。
顔を上げた人を見て、僕は「この人知ってる」と思った。
記憶の中を脚色したら、こうなる。人が年齢を重ねたらこうなるであろう顔。
でも、そのおばーちゃんは桐島を覚えていなくて(そりゃそうです…)血縁関係を説明したら、「折角だから線香でもあげていくかい?」と言ってくれた。
 

実は、僕はその時にもう、ちょっとだけ涙が出そうになってて。
土間のある玄関からではなく、子供の頃高すぎて登れなくて苦労した縁側から入ったこの空間で。
ほろほろと、泣いてしまった。
 

子供の頃は「好き」というのがよく分からなかった。
人を好きになる、というものもどういう感情になったら「好き」なのか分からなかった。
勿論、大人にそれを伝える手段なんて知らなかったし、思いもつかなかった。
 

変わらない景色は、人が少なくて。でも、もっともっと広くて怖い場所だった。
自分の背が伸びたのと、あまり怖いものが無くなったというのもあるけど。
この写真には写ってない場所も、怖くて。

夏休みに泊まりに来た時に部屋の真ん中に「かや」を吊って、その中で眠ったのだけど。
窓を全く閉めなくて、夜風がどうのこうのよりも、真っ暗闇の山の中と布団のある空間が繋がっていて。
自分を守るものはこの「かや」しかなくて、全く眠れなかった記憶がある。
 

おばーちゃんは、いろいろな事をゆっくり話してくれる。
こういう時の会話は聞く専門になるから、とても楽でいい。聞いているだけで心地いいから。
誰それの息子に嫁が来た、とか。今年はキャベツがいい、とか。
そんな事を話して、縁側にただ、座っていた。
 

花がね、もう終わりなんだけど。きれーーーーに咲いてるから。と。
案内してくれる。

たぶん、この樹、ずーっと前から知ってる。
この奥に行くとずーっと畑で左に行くと蜜柑畑(山)があるんだ。
右はきゅうりで、小さいのは食べていい。トマトは駄目。ビニールハウスまで行かないこと。

なんで、覚えてるんだろう。

「写真を、撮らせてください」と、お願いして、撮らせて貰った。
 
  
僕は、どんな顔をしていただろうか。この写真を見て、思った。
でも、シャッターを押した気持ちは、忘れないと思う。

人に何かを伝える事は、やっぱり難しい。
 

と、撮影中に猫がやってきて。
「誰だ、お前は」と、不審者を見る目でじっと観察された。
 

しばらく睨まれるとどうでも良くなったのか、ぷいっとそっぽを向いて行ってしまう。
おばーちゃんの娘さんが飼ってたみたいだけど、娘は一緒に住んでなくて。
今はほぼおばーちゃんちにいるみたい。

「一緒に寝てるんだよお」と、嬉しそう。
「それは素敵ですね」と、僕も笑う。
 

あの日見た景色はそのままで、この地面の色さえ覚えてる。
縁側の下には薪がたくさん積んであって、裏の竹林はたくさんタケノコが生えるんだって。
なんにも変わってないけど、変わってないものなんか、本当は一つだって、ない。

自分はもう子供ではないし、ひぃおばーちゃんはもういない。
後悔しても、もう償う相手もいない。

理不尽さを嘆くより、自分が納得いくまできちんと行動すること。
それが結果として間違っていたとしても、後悔はしない。
自分への甘さや保身が、その脚を、手を止める。

片手は大切な人を守りなさい。
もう片方は、何かを作りなさい。
 

言葉は、消えない。
想いも、消えない。

それは、生きている限り、ずっとずっと消えない。
だから、自分が存在している限り、あの人の言葉を、この景色を忘れないと思う。

そして、絶対に自分だけは赦さないで行こうと、思う。

久しぶりの、海でした。
 

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