存在しないひと。@木桃いつな

 

島根の旅の目的のひとつ。

木桃さんの撮影。撮影する主題とスタイリングだけ決めていて、撮影場所は前日に決定。

朝5時起き、6時から撮影。

まだ、朝の気配がほの仄蒼く残る山陰の朝。

 

 

灯りはつけないで、緩く差し込む朝だけ。

まだあちこちに夜が残っているような濃淡。真っ白なドレスに少し夜が残る。

 

 

白いドレスは薄くて綺麗なリネンでできていて。

お互いが好きなデザイナーさんの作品。

毎回そうだけど、何を撮るかということを話しているうちに、どこへ行きたいのかを決めていくような感覚。

それは会話じゃない時もあるし、言葉でもない時もある。

 

 

美しいと思うからシャッターを押すのであって、「きれい」でも「かわいい」でもないと思う。

「こわい」とか「つめたい」はちょっと似ている。

感覚の共有。

 

 

そこに座っている被写体を撮っているのではなく、お互いの心の中の一部を引きずり出してここに置いたみたいな感覚。

それが何かと言われたら言葉にできないけど、写真にはなっていると思うから不思議。

 

 

かなり、暗いけど、それが良くて。

ざらりとした質感。ファインダーでは真っ黒に近い。

浮かび上がる透明な影と白い足。

 

 

人間の写真を撮っているというか、精神を撮っているという感覚。

ポートレイトではなくて。そんないいものじゃなくて。

彼女の顔を、撮ってるわけではないのです。

 

 

この百合を見た時にものすごく怖くて引き込まれて。目が離せなくなったのは。

植物が持つ命の落ちてゆくさまが、見えたからかもしれない。

雨あがりの美しさと、朝が消えてゆく、かなしさと。

水を含んだ空気が、山百合のけだるさに馴染んで。死の、においみたいだった。

 

 

その百合たちの園に、ふわりと混ざれる存在。

木桃さんは存在しないけど、存在する不思議。

 

あるひとに「このモデルさんは『こう撮られたい』っていう意思がないから、どこでも入れるんだろうね」と言われたことがあって。まさに、そうかも、と。

木桃さんは旅をするひとで、どこにでも行けるんです。でも、どこにも行けない。

 

 

その、線引きみたいなものを、必要とする時があったのかもしれないけど。

なんていうか、だんだんよくわからなくなってくる。

 

表現したいものを形にしていく作業よりも、ただ、脳内の仄暗い蒼い色がずるずると引き剥がされていくような。

 

 

それでも、静かな世界は水の中のようで。

光が少ないからこその、溶け込むような紺色。

 

 

前回の撮影が台湾だったのを思い出して、ちょっと懐かしい。

でも、ここは台湾よりも、パリよりも遠く感じる。

 

 

どこでもない場所というのを探しているわけじゃないし、そういうのを求めているのはもういいと思うけど。

こうして心の中をざくざくと削って洗い出すのは嫌いじゃないし、きれいなものになると思う。

 

 

その、幻のような一瞬に、シャッターを押す指がありますよう。

そのまま消えてもいいような、瞬間の光が、美しかったです。

 

 

木桃いつなさん、被写体ありがとうございました。

 

撮影は他郷阿部家でした。

 

 


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